心くばり

長男を亡くした親友への励まし――情を添える〈4〉

 親しくつきあっていた製菓会社の社長の長男が、昭和二十五年、三十九歳の若さで急死した。次男、長女もすでに亡くなっており、たった一人残った長男はまさに社長にとっての宝物であった。

心くばり

従業員のことを思うと......――情を添える〈3〉

 大正十四年、幸之助は近隣の人たちの推薦を受けて、大阪市の連合区会議員の選挙に立候補、当選したが、その選挙運動を通じて十七歳年長のある区会議員の知遇を得た。  ある日、幸

心くばり

一人も解雇したらあかん――情を添える〈2〉

 昭和四年五月、松下電器は待望の第二次本店・工場の新築がなり、第二の発展期を迎えた。従業員約三百名、まだ町工場の域を出ないとはいうものの、発展に発展を続ける姿は業界でも目立つ存

心くばり

このごろ腹減らへんか――情を添える〈1〉

 戦前の話である。入社一年目のある新入社員が、正月に夜遅くまで残業していてお腹が減ってきた。正月なので、もちろん食堂は休みである。ふと、修養室に鏡餅があることを思い出した。