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松下幸之助の「リーダー」としての側面を洞察すると、「人間の本質」というものを常に根底において、人と接し、育て、褒め、叱り、諭し、導こうとしていることがわかります。著書『指導者の条件』に、こうあります。
「人間の本質というものは変えることができない。それを変えようといろいろ努力しても無理である。というより、人間自身を苦しめることになる。だから、その本質はまずこれをあるがままにみとめなくてはならない。そして、その上でどうあるべきかということを考える。それが大切なわけである。これは人間にかぎらず、ものごとすべてについていえることであろう。
けれども実際にはなかなかそれができない。ともすれば、好きだとかきらいだとかいった感情や、自分の利害にとらわれてものごとを都合のいいように見てしまう。そうなると、真実と離れた姿しか見られないということになる。それでは正しい判断もできないし、事をあやまる結果になってしまう。
だから、指導者たるものは、できるかぎりとらわれを排して、ものごとをあるがままに見るようにつとめなければならない。そうしたあるがままの認識があって、はじめて適切な指導も生まれてくる」
まずは「人間」を知る。そのうえで、それぞれに応じた、適切な指導をしていく。それがリーダーとして何より大切にしなければならないことでしょう。
松下幸之助の「リーダーシップ」についての考え方の要諦は、この『指導者の条件』にコンパクトにまとまっていますが、晩年に松下政経塾において語った講話や塾生たちとの問答にも、企業経営のリーダーのみならず、社会全般に通用するリーダー論が述べられています。