松下幸之助の経営・マネジメント
経営は生きた総合芸術
松下幸之助は、経営学は学べても経営は学べないと言っていました。実際、経営は、理論やマニュアル通りにいかないことが往々にしてあり、その実践には経験に裏打ちされたコツやカンが求められます。芸術ともいうべきセンスが経営者には必要となってくるのです。その意味で、経営はいわば完成することのない生きた総合芸術であると、著書『実践経営哲学』の中で次のように述べています。
「経営というものは、いろいろ複雑多岐にわたる内容をもっている。
分野ということ一つをとってみても、さまざまである。研究したり開発をする部門、それにもとづいて製造する部門、できあがった製品を販売する部門、あるいは原材料の仕入れ部門、そのほか経理とか人事といった間接部門がある。そうした経営における一つひとつの分野がみなこれ創造的な活動である。そして、それを総合し、調整する全体の経営というものもこれまた大きな創造である。
そうしてみると、経営は芸術であるといっても、それは絵画であるとか、彫刻であるといったように一つの独立したものではなく、いわば、その中に絵画もあれば彫刻もある、音楽もあれば文学もあるといったように、さまざまな分野を網羅した総合芸術であると見ることもできる」
『実践経営哲学』をはじめ、『商売心得帖』や『決断の経営』『事業は人なり(旧書名:人事万華鏡)』など多数の経営書には、経営・商売の要諦や人の使い方のコツを会得するヒントが詰まっています。