自らが創設したPHP研究所が30周年を迎えた昭和51年、松下幸之助は、21世紀初頭の日本はこうあるべきだ、こうあってほしいとの願いをこめて『私の夢・日本の夢 21世紀の日本』という本を出版しました。それは未来小説という体裁をとっていますが、いわば松下幸之助の提言の集大成ともいえるものでした。
松下幸之助が描いた「理想の日本」「理想の日本人」とは、いったいどんなものだったのでしょうか。
◆国会議員に求められる基本的な条件とは何か? 【政治観3】 からのつづき
松下幸之助が描いた21世紀の日本
政治が安定している国――part4
しかし、そうした議会の姿を見て誰に投票すべきかを判断し、良識ある国会議員を送り出すのは、民主主義のもとでは結局は国民である。かつて松下幸之助は、『PHP』誌に、「国民が政治を嘲笑しているあいだは嘲笑い値する政治しか行なわれない」「民主主義国家においては、国民はその程度に応じた政府しかもちえない」という二つの言葉を毎号掲載し、国民一人ひとりがもっと自分のこととして政治に関心を寄せなければならないと呼びかけたが、家庭においても学校においても政治の大切さを啓発するとともに、何が正しいか、何が国民全体にとって利益となるのかを見極める眼を育てる教育が大切だと訴えたのである。
松下幸之助は、党利党略にとらわれ、いたずらに空転を重ねる国会の姿に憤りを感じながら、二十一世紀の日本においては、政治の基本理念が確立し、政治家と国民の政治的良識がさらに高まり、国民全体が活き活きと活動している、そのような姿を頭に描き、その実現を、文字どおり祈るような思いで願っていたのである。
(おわり)
◆『[THE21特別増刊号]松下幸之助の夢 2010年の日本』(1994年10月)より
筆者
谷口全平(元PHP研究所取締役、現客員)
筆者の本
(いずれも現在、電子書籍のみの販売となっております)
関連項目
・松下幸之助の社会への提言【政治】
・松下幸之助の社会への提言「私の夢・日本の夢 21世紀の日本」
・松下幸之助の政治・経済・社会・国家観