いま日本に求められるのは長期にわたるビジョンである。経済、企業経営、教育、宗教、国土と社会、政治などについて21世紀のあるべき姿を小説的な手法で描く。

 

『私の夢・日本の夢 21世紀の日本』

発表媒体

PHP研究所創設30周年記念出版書籍(1977年1月発行)

 

あとがき

 以上、二十一世紀の日本のあるべき姿というものについての私なりの夢をのべてまいりました。

 まえがきでも申しましたように、これは学問的専門的な立場から見れば、いろいろと問題もあり、欠点もあろうかと思います。また紙幅の都合もあって、ここにはごく大まかなことの一端を記したにすぎず、したがって文章の脈絡などについてもスムーズに運んでいないという面もあろうかとは存じますが、ともかくも一応私の考えられる範囲でまとめてみたものです。

 とくに本書の政治機構の設定につきましては、文部省を教育府にし、国土創成省及び政治生産性本部を新設したという以外は、便宜上、一応現状の形を踏襲いたしておきました。もとより、現在の政治機構のなかには不備な点もあると思われますし、そういうものは今後必要に応じて適宜改廃していかなければなりませんが、それは改革する必要の出てきた過程のなかで、その都度検討していただくことにいたしまして、ここでは現在の呼称を用いたまま、その内容が改善充実しているという設定にとどめたわけです。

 また本書を会話体でまとめたということについても、賛否いろいろあるかもしれません。私もこういう形で本をまとめたのは初めてのことで、不慣れの点があったことも事実であります。しかし理想の社会像といった、いわばかたい内容のものを、どうすれば平易に訴えられるかということをあれこれ考えた末、結局はこういう形にするのがよかろうということになったわけです。

 そもそも私のような専門外のものが、このような大きなテーマのもとに、しかもこのような形であれこれ考えたりまとめたりするなどということは、一面まことにおこがましい気もいたします。けれども同時に、たとえ専門の立場からではなくとも、国を思う一国民としての立場から、この国日本のあり方について自分の考えるところを率直にのべさせていただくということも、必ずしも無意味ではない。むしろ必要なことではないかとも感じるのです。

 何と申しましても今日、国家社会を支えているのは一人ひとりの国民です。ですから、日本の国をよりよくしていこうとねがうのであれば、お互い日本国民一人ひとりが社会のあり方や理想の姿というものについてともどもに意見を出し合い、お互いの知恵と力とをあわせていかなければならない。そういうお互いの積極的な努力が一つひとつつみ重ねられてはじめて、この国、この社会がよりよき姿において発展していくのではないか、またそこに民主主義社会の真価が発揮され、おのずと道がひらけていくのではないかと、このように思うからです。

 その意味で、本書をお読みいただいて何か感ずるところをもたれた方は、それぞれのお立場お立場において、国のため人びとのため、あるいは世界人類全体のために大いに世に発言し、提案していっていただきたいと思います。

 なお本書をまとめるにあたって、PHP研究所研究員の諸君にも協力してもらいましたが、とくに本書の最終検討の段階で、それらの諸君ともども高野山西禅院において一週間ほど合宿研究をしたことを、本書が生まれた背景の一つとして付記しておきます。

 ねがわくは、PHP研究所創設三十周年の記念出版物である本書が、よりよい日本をつくり出す上で何らかのご参考になり、国民の多くがねがう社会が一刻も早く実現することを心から念じつつ、筆をおくしだいです。

 

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私の夢・日本の夢 21世紀の日本