感謝報恩の心を持つということは、人間にとってきわめて大事なことである。
いうまでもないことであるが、人間は自分一人の力で生きているのではない。いわゆる天地自然の恵みというか、人間生活に欠かすことのできないさまざまな物資が自然から与えられているのである。また多くの人びとの物心両面にわたる労作というものがあって、はじめて自分の生活なり仕事というものが存在し得るのである。いいかえれば、自然の恵み、他の人びとの働きによって、自分が生きているわけである。
そういうことを知って、そこに深い感謝と喜びを味わい、そしてさらに、そうした自然の恵み、人びとの恩に対して報いていくという気持ちを持つことが大切だと思う。そういう心からは、いわば無限の活力とでもいうものが湧き起こってこよう。それが事をなしていく上で非常に大きな力となってくると思う。
『指導者の条件』(1975)