ぼくが今日あるのは、決して自分の力や才覚のためではない、父の願いや思いというものが、ぼくの身体に伝わってきていたためではないか、という気がするのです。「親孝行したいときには親はなし」ということわざがあるように、親が亡くなって後に、折にふれその偉大な愛に胸を打たれ、せめて少しでも孝行をしておいたらと悔やまれる。それが世の常であるだけに、とくに若い皆さん方には親を大切にすることを心がけて欲しい。最近、とくにそのように思うのです。

『若葉』(1986)