むかしからの言いつたえでは、日本には、やおよろずの神と言って、神さまが八百万もおられたということだが、八百万もおられたら、神さま同士でも、ものごとをまとめる時には、やはり譲り合い、辛抱され合ったことと思われる。

 人間よりもえらい神さまですらそうなんだから、ましてわれわれにおいては、なおさらのことである。いつまでも自分の正しさのみを主張し合っていたのでは、この世の中はいつまでも住み良くはならない。

 譲り合いと辛抱と――こんな心がけもまたお互いに養っておきたいものである。

『四季のことば』(1959)