本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<事業を伸ばす要諦> 独自の新分野を開拓する

人真似をするのは楽だが……

 一般的に、日本人には人と違うことを恐れ、同じだと安心するという国民性があるといわれるが、それは産業界においても見られることのようである。ある商品や事業がヒットすると、あそこがやるならうちも、ということで、それと似たりよったりの機能や品質、価格、サービスをもって、われもわれもと参入する。

 

 もちろん、それによって機能やサービスがより向上し、安くなるといった面も少なくない。しかし、それは往々にして過当競争を招き、利益があがらず、体力ばかりが消耗するといった状況をつくり出す。

 

 人真似をするのは、一面、楽である。だが、他社と同じようなことをやっていたのでは、将来の発展、飛躍は望めまい。いずれ他社の後塵を拝するようになるか、ジリ貧になるのがおちであろう。

 

 そうならないためには、何よりも自社独自のノウハウなり新しい価値のある商品、サービスを開発し、新市場を開拓することである。たとえ規模は小さくとも、どこにも真似のできないものを研究、開発し、しかもその開発したノウハウなり技術にあぐらをかかず、さらに新しいものを次々に生み出していく。そのようにして、自社にしかない独創性、ユニークさで勝負していくことが大きな力になる。

 

旧来の慣習や仕組みを思い切って捨てる

 ところが、日本の社会では、異質なもの、独創的なものを生み出す土壌が貧困である。それらを排除する傾向すら見られる。しかし、それでは魅力的でユニークなアイデアは生まれにくい。異質なもののぶつかりあいのなかからこそ、それは生まれてくるのである。したがって、企業としては、異能の人材なり異なった発想を積極的に取り入れ、生かせる土壌つくりを進めることが肝要であろう。

 

 そのためには、何よりもまず、経営者自身が意識改革をしなければならない。違うことが尊いのだという考えに立って、それを従業員に呼びかけていく。また、いかなる困難、混迷のなかにあっても、企業を繁栄、発展させていく道は必ず見いだせる、対処の道は千種も万種もあると考える。さらには、過去の常識、ものの見方・考え方を思いきって捨て去り、新しいニーズは何かを原点に戻って考えてみる。そうした前向きで自由な発想のなかから、画期的な方法なり、商品、サービスは生まれてくるのである。

 

 新たな市場を開拓した商品やサービス、システムのほとんどは、そうした旧来の慣習や仕組みをブレイクスルーしようという企業家の意欲と、前向きで自由な発想から生まれたものだということを忘れてはならない。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務)

 

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