本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

<ゆとりと活力を生む経営>青春とは心の若さである

松下幸之助の座右の銘

青春とは心の若さである。
信念と希望にあふれ、勇気にみちて
日に新たな活動を続けるかぎり、
青春は永遠にその人のものである


 これは、松下幸之助が座右の銘としていた言葉である。アメリカの詩人、サミュエル・ウルマンの「青春」という詩にヒントを得て、昭和四十年、松下が七十歳のときにみずからつくったもので、つねに若くありたいという希望と、つねに若くあらねばならないという戒めをこめたものだという。

 肉体的な年齢が年々増えていくのは、だれもが避けて通れない。しかし、心の若さは気のもちようで、何歳になろうとももち続けることができる、つねに前へ進む気力さえ失わなければ、若さはいつも向こうからついてくるというのが、松下の信念であった。

 松下は九十四歳で世を去ったが、亡くなる寸前まで、日本の将来のあり方を考え続けていた。また「三世紀にわたって生きるために百七歳まで生きる」「日本新記録をつくるために百三十歳まで生きる」と、みずからの年齢までも貪欲に生きる目標としていた。そのつねに前向きに生きる姿勢は、まさに青春そのものであった。

信念と希望と勇気

 日本の産業構造は今、大きな転換期にある。変革の必要性が強く叫ばれ、企業革新を担う企業家の出現、新たなベンチャー・ビジネスの台頭が待望されている。

 ところが、現在の日本には"経営管理者"ばかりが増えて、企業家精神に富んだ"企業家"がきわめて少なくなったという指摘がある。これでは、将来の発展に向けての構造改革はおぼつかない。
 今、企業経営者に求められているのは、冒頭の「青春」の言葉にあるような、信念と希望と勇気ではなかろうか。

 いかなる困難、混迷のなかにあっても、企業を繁栄、発展させていく道は必ずあるという信念。こうやってみたい、こうありたいという情熱や希望。失敗を恐れず、未知のものに思いきって挑戦していく勇気とあくなき探究心。そうした、あふれんばかりの意欲と自信と不屈の精神をもって日に新たに進むべき道を探り、エネルギーのすべてをぶつけて懸命に努力してはじめて、新たな発展への転機をつかむことができるのではあるまいか。

 心の若さを失うことなく、夢を追い続け、企業家精神に満ちあふれていれば、年齢がいくつになろうと問題ではない。次々となすべきことに思いが走り、新しい商売のやり方や発想が生まれ、ビジネスチャンスを見いだすことができるにちがいない。

 企業の活力は、まさに経営者の志と使命感、挑戦心に委ねられているのである。

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所客員)

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関連項目

用語セレクション「青春とは心の若さである」

コラム「『青春』の言葉の作成――PHP活動〈64〉」