本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<事業を伸ばす要諦> つねに現状を見直す

セコム創業者・飯田亮氏に学ぶ

  わが国の従来の社会慣習では不要とされていた、安全を売るというセキュリティ・ビジネスを、日本で初めて事業化したセコムの飯田亮氏の歩みは、たえざる現状否定のくり返しであった。昭和五十八年には、“創業二十年にして、やっと世間に認められてきたところなのに”“営業マンがようやく名刺で仕事ができるようになってきたのに”という社員の猛反対にもかかわらず、社名を「日本警備保障」から「セコム」に変えている。なじんでもらった社名を捨てるのは、金に換算できないほどの損失かもしれないが、社名に寄りかかるようになった社員たちの意識を放っておく危険に比べれば、メリットのほうが大きいと判断したのである。

 

 われわれは、とかく自分のやってきたことを正当化し、今やっていることを肯定しようとする。また、過去の常識や通念からなかなか離れられない。しかし、どんなに成功を収めたシステムや組織でも、時代が変われば、逆にそれが失敗の原因になるといったことも、歴史の教えるところである。

 

 したがって、企業が成長、発展し続けるためには、現状に安んずることなく、従来の方法や考え方をたえず見直し、否定しつつ、これまでとは異なった新しい考え方や仕組みなどの創造に取り組まなくてはならない。とくに、今日のような変化の激しい大転換期には、過去にこだわらず、みずから積極的に自己変革をはかり、経営の革新を徹底して進めていく必要があろう。

 

ゼロからスタートする勇気と決断力を

 そのために大切なことは何か。それは、何よりもまず経営者が、今までのやり方・考え方を白紙に戻して、ゼロからスタートする勇気と決断力をもてるかどうかではないか。

 

 新たな市場を開拓した商品やサービス、システムのほとんどは、旧来の慣習や仕組みを否定し、変革しようという経営者の強い思いから生まれている。セコムにしても、あるいは他社に先がけてトランジスタを使用したソニーにしても、いち早く機械によるファスナーの量産に踏みきったYKKにしても、初めて宅配便を始めたヤマト運輸にしても、経営トップに、これまでだれもやっていない新分野を開拓したい、新たな商品やサービスを生み出したいという強い意欲と、それを手がける勇気と決断力があったからこそできたのである。

 

 これは結局、経営者の意識改革と実行力にすべてがかかっているということであろう。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務)

 

関連書籍

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