本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<事業を伸ばす要諦> 提携も戦略の一つ

他社と組むメリット

 最近さまざまな業界で、系列を越えた部品の共通化や商品の共同開発、共同物流といったことが盛んに進められるようになってきた。なかには競争相手同士の間でもそうした動きが見られる。また、自社ですべてを研究、開発、製作するのではなく、他社が進んでいるものについては、そこから供給を受けるOEM(相手先商標による生産)を軸とした提携も行われている。

 

 こうした企業間の提携は、多様化が進むニーズに応じた商品を、すばやく的確に、一企業単独で何から何まで手がけてそろえるのは、いかなる大企業でも、もはや至難の業になってきていることがその背景にある。単独でやるには開発費の負担やリスクが大きく、それを軽減したり、あるいはお互いの不得意分野を補完しあうとともに、みずからの得意分野に特化し、経営資源を集中して生き残りを賭けるといったことがそのねらいとしてあげられよう。

 

 提携によって、合併同様のスケールメリットを得ることもでき、また異業種間の提携といったものからは、従来の個々の企業では考えられなかったような、まったく新しいものが生まれてくる可能性もある。

 

 そのようなことを考えれば、何から何まで自前でやる必要はなく、足りないところ、任せられるところについては大いに他の力を活用していくことが、経営戦略のうえでも有力な選択肢の一つとなりうるであろう。

 

提携前に考えておきたいこと、大切にすべきことは?

 ただその場合、外部の力を借りるとしても、それに頼りきるのではなく、やはりまず、みずからしっかりと立つことが前提となる。力の上に力を得れば、さらに力は増すが、力のないものの上に力が加わると、かえって押しつぶされてしまうことにもなりかねない。お互いが自主経営を高めあうという自覚があってこそ提携も生きてくるのである。

 

 また、他社と組むことによって、相手企業が自社の業域を脅かすといったことが生じないともかぎらないし、他社から製品供給を受けることが、従業員の士気を低下させる恐れもある。したがって、提携するにも、やみくもにやるのではなく、自前にこだわるべきところはあくまでもこだわり、提携してもよいところは提携していく、その見きわめをきちっと行うことも大切であろう。

 

 しかし何よりも大切なのは、企業としての将来構想・ビジョン、さらには、わが社は何のために存在するのか、どのように経営していくのかという経営理念をしっかりふまえたうえで提携することである。さもないと、当初の目的からはずれ、気がついてみると事志に反していた、といったことにもなりかねないのではなかろうか。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務)

 

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