本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<変化、ピンチへの対応> 原点に立ち返る

江崎グリコの創業理念

 江崎グリコの創業者、江崎利一氏は、商売の仕方を薬種業を営んでいた父親に、商道精神を実家の近くに住んでいた篤学の士、楢村佐代吉氏に教わったという。その楢村氏の教えは、「売り手と買い手の共存共栄がなければ、ほんとうの意味の商売は成り立たないし発展もない」というものであった。この教えを江崎氏は、「栄養菓子グリコの普及によって国民の健康に貢献し、社会の役に立つ」というグリコの創業理念に生かし、また事業の発展に比例して社会へ奉仕還元すべきだという信念から、昭和九年に財団法人母子健康協会を設立し、子供の健康増進に尽くした。

 

 企業の存在意義や使命は、業種によって具体的な内容は異なるであろう。しかし、すべての企業に共通しているのは、この江崎氏のように、人々に奉仕、貢献し、世の中に役立つべく存在している、ということであろう。

 

 したがって、たとえ私企業であっても、自分の会社の活動が世間の人々の生活にどのような影響を及ぼすか、プラスになっているかどうかという観点から、つねにものを考え、判断しなければならない。すなわち“私”の立場や都合で物事を考えるのではなく、“自分の好き勝手に経営をやるのは許されない。人々に喜ばれるものでなければならない”という自覚と責任感をもって活動することが大切なのである。

 

世の中の役に立つ仕事であるか

 ところが、昨今の企業の不祥事や経営トップの言動を見るとき、この大事な基本を忘れていたり、意識が薄くなっているように思われる。順境が続くなかで、社会、人々に貢献することの大切さを身にしみて自覚しないままに経営に取り組んできた。その結果が、不祥事や倒産といった事態をもたらす一つの要因になっているともいえるのではないか。

 

 基本を忘れ、自分本位にやっていたのでは、たいていは失敗に終わり、世の中に役立つ企業になることは難しいであろう。やはり社会の人々への奉仕をまず考え、行動する。そうしてこそ、人々に真に喜ばれ、プラスになる活動ができるのであり、人々に喜ばれ、世のため人のためになってこそ、またなればなるほど企業は発展していくのである。

 

 企業のあり方が厳しく問われているときだけに、そして厳しい経済情勢にあるときだけに、わが社は何のために存在しているのか、仕事の意義はどこにあるのかという原点にいま一度立ち返り、企業本来の使命を果たすべく力を尽くしたいものである。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務)

 

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