本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。
<変化、ピンチへの対応> ものに動じない心
経営者・責任者の態度は社員に影響する
経営を進めていくなかでは、さまざまな危機、難局が少なからず訪れる。そのときに、経営者・責任者がどのような態度をとるかということは、組織の士気にきわめて大きな影響を及ぼすといえよう。
危機に直面したとき、社員はまず、必ず経営者・責任者の顔色を見る。そのとき、もし経営者・責任者の不安な気持ちが顔や言動に表われていれば、社員は浮足だってしまう。そうなれば、切り抜けられるはずの危機でさえ乗り切れなくなってしまいかねない。
逆に、経営者・責任者がどこ吹く風と落ち着いた態度で、自信に満ちた指示命令をしていれば、社員はそれだけで安心して働くことができる。どのような状況におかれても、経営者・責任者が、平常心を失わず、泰然としていてこそ、社員も冷静に事に処すことができるのである。
日ごろから相応の準備を
とはいえ、ものに動じない心、冷静沈着さは、そう簡単にもてるものではない。それはやはり、修羅場を何度も経験し、くぐり抜けることによってはじめて培われるものであろう。
しかし、たった一度の危機、難局で、二度と立ち直れなくなることもありうる。そのことを考えれば、平素からそうした状況を想定して、いつ何が起こっても、動ずることなく対処できるように、それ相応の準備と覚悟をしておく必要があろう。
もとより、いちばん望ましいのは、そのような事態に陥らないようにすることである。そのためには、時代の変化や経済の流れがどうなるかを読み、より厳しい予測に立って、環境がさらに悪化しても大丈夫なように、事前に十全なる手を打っておくことが大切である。
しかし、いくら細心の注意をはらっていても、避けることのできないこともある。とくに今日は、景気の先行きがきわめて不透明であり、思いもよらないことがいつ起こるともかぎらない。
それだけに、日ごろから“転ばぬ先の杖”の準備と併せて、万一の事態に動じない心を養っておかなければならないといえよう。そういう事態がありうるんだということで、日ごろから心の準備をしているのといないのとでは、いざというときに、大変な差が生じてくる。
いざというときの覚悟をもって、積極的に布石を打っていく。そうしてこそ、危機、難局に処する知恵が生まれ、それをチャンスに変える道もひらけてくるといえよう。
◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集
筆者
佐藤悌二郎(PHP研究所客員)
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