本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<変化、ピンチへの対応> 発展への基点

自然の理法に則した方策を

お互い人間の共同生活、さらにはそれを包含する大自然、大宇宙は、日に新たに生成発展している、たえざる生成発展こそが自然の理法である、という見方がある。

 

こうした見方に立つならば、個々の企業経営も経済活動の全体も、きのうよりきょう、きょうよりあすへと着実に成長、発展していくのが本来の姿であり、それがそうならないのは、お互いの考え方や行為に自然の理法にもとるところがあるからだ、とも考えられる。つまり、事業経営というものは、道にかなった方針を立て、全員が心と力を合わせ、自然の理法に即した方策をもってその達成に努めるならば、必ずうまくいくようになっている、ということである。

 

今日のようなきわめて厳しい環境におかれた経営者にとって、何にもまして大事なのは、こうした見方を基本に過去を反省し、将来への展望をひらくことではないか。

にもかかわらず、企業はときに雇用調整や賃下げを云々せざるをえなくなる。それは、経営環境もさることながら、結局はすべてトップに責任があるということであろう。

 

明るく前向きに夢と希望と情熱をもつ

したがって、経営者に必要なのは、まず何よりも、わが方針に道にかなわぬ点がなかったかどうか、理にもとるところがなかったかどうかを、原点に返って厳しく自己反省することである。それこそが、将来の着実な安定した発展につながる基点になるといえよう。

 

そしてその反省のうえに立って、“これをやるのだ、やりたいのだ”という志、烈々たる情熱をもって、果敢に革新をはかって現状を打開し、将来への事業の道を切りひらいていく。それには新しいものに踏み切る決断力が必要である。また、感性を磨く努力を怠らず、つねに行動して、時代の流れを感じ取ることも大切であろう。

 

かつて、戦後日本に企業家が輩出し、ビッグ・ビジネスに成長、発展したのは、そうした志と烈々たる情熱を企業家がもっていたからである。この日本の経営者に脈々と息づいていた“企業家精神”を、経営者は今こそ大いに発揮して、創造的で活力のある新時代を切りひらいていかなければならない。要は、経営者が、つねに明るく前向きに、夢と希望と情熱をもって企業の進むべき道を歩めるかどうか、そこに事の成否がかかっているということであろう。

 

経営者のよって立つ基本の信念と、積極果敢に取り組む企業家精神が、今、何よりも強く求められているのである。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所客員)

 

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