本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<変化、ピンチへの対応> 環境への配慮

みずからの利益ばかりでなく

環境が今、重大な問題になっている。温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、砂漠化、熱帯雨林の減少、海洋・大気汚染、廃棄物処理など、地球環境全体に及ぶ問題が山積し、人類が今後もこれまでのような行動をしていけば、地球上の全生物は存亡の危機に瀕する恐れがある。

 

もとより、その原因のすべてが、先進工業国とその企業にあるわけではない。しかし、これまで多くの資源を使い、物をつくり消費してきた先進工業国、企業には、この問題に積極的に取り組む責任が課せられているといえよう。みずからの利益にばかりでなく、地球環境や未来の世代の利益にも結びつく活動が強く求められている。

 

そのためには、これまで以上に、たとえば設計段階からリサイクルのコンセプトを取り入れ、省エネ、省資源型で海洋や大気や土壌を汚染する危険性が少なく、廃棄後の処理も容易な製品をつくる技術の開発が必要である。あるいは物流システムにも改善をはかり、環境にやさしくかつ安全なものにしていかなければならない。

 

環境対策は企業の社会的責任の一つ

これらの環境対策は、企業にとってはコストアップの要因となる。しかし、人間が地球上で生かされている以上、そしてその人間の営む企業活動のあり方いかんが、これからの地球環境にはかり知れない大きな影響をもたらす以上、いかにコストアップになろうとも、これに力強く取り組まなければならない。その負担はもはや避けられないというより、社会の一員として当然支払うべきコストであり、企業の社会的責任の一つである。

 

企業本来の使命は、よい品、よいサービスを安く豊富に供給し、生活や文化の向上に貢献するところにある。ただ、“よい”という意味が、以前は、品質、機能にすぐれているということであったが、今は“環境にやさしい”という意味も加えて考えられなければならない。

 

また消費者も、かつては商品やサービスを機能やデザイン、価格などで選んでいたが、現在は、それだけではなく、その企業がどの程度地球環境に配慮しているかを加えて選ぶ傾向が強くなっている。

 

したがって、企業が環境対策に取り組むことは、短期的にはコストアップになったとしても、中長期的に見れば、消費者の支持や社会からの評価を得て、それが結局は、企業の競争力の強化にもつながっていくと思われる。
いずれにせよ、企業の社会的責任に対する経営者の考え方、姿勢が、今あらためて問われているといえよう。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所客員)

 

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