本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。
<変化、ピンチへの対応> 21世紀型企業の条件
時代に応じた企業のあり方
現在、そして将来に向けて、わが国では、高齢化の急速な進展、女性の社会進出と少子化、ゆとりと豊かさを求めるライフスタイルの定着、経済のグローバル化を背景とした企業のさらなる国際化、急ピッチな高度情報化の進展、消費者の志向の変化、さらには環境問題など、さまざまな変化なり問題が次々に起き、また起ころうとしている。
それらの変化なり問題は、経営環境を激変させ、企業のあり方に変革を迫るとともに、さまざまな新しいビジネスを生み出す。生涯学習やヘルスケア、老人介護や育児などを支援する生活支援ビジネスの成長が見込まれ、情報関連分野も機器を含めさらに巨大な市場に成長すると考えられる。また、環境関連産業の市場規模も、今後ますます大きくなることが予想される。
そのうえ、今後のビジネスにおいては、いかに異次元の技術を開発できるかといった競争がますます激しくなるであろう。したがって、低価格・高品質であることはもちろん、独創的な商品・サービスを生み出せるかどうかが、企業の消長を大きく左右することになる。
"オンリーワン企業"を目指す
こうしたなかでは、むろんこれまでのように、同種の商品市場でシェアを争う“ナンバーワン企業”を目指すことも大事ではあろう。しかしそれ以上に、新しい独自の事業領域を切りひらき、他にない得意分野をつくって、完全に差別化した商品、サービスを開発し、独自の市場で“オンリーワン企業”を目指す行き方が重要になってこよう。
そのためには今後の産業の潮流をしっかりと見すえ、技術の進歩と社会の変化を十分に見きわめながら、それに合致したかたちに経営体質、事業領域をシフトさせ、新しい商品やシステムを創造していかなければならない。それには、経営者に、変化を読み取る洞察力、先見力が要る。変化に対応して行動を起こす適応力と行動力もなくてはならない。あるいは、新しいものを生み出す創造力、さらにはその基盤としての経営に対する信念、理念も要求されよう。
しかし、分けても今、経営者に不可欠なのは、“わが社は何をもって勝負するのか”“何をわが社の個性にするのか”という将来の事業の方向づけと戦略ではないか。長期的な視野に立って、明確なビジョン、戦略を従業員に示し、それを断固として進めていく情熱をもった経営者であってこそ、人をも組織をも引っ張っていくことができ、二十一世紀に成長、発展することができる企業への道がひらけるのではなかろうか。
◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集
筆者
佐藤悌二郎(PHP研究所客員)
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