本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。
<人材育成と組織つくり> 活気にあふれた組織つくり
社員への権限移譲と意見がいえる風土
創業のころはチャレンジ精神が旺盛で変化に敏感だった企業が、年月が経ち、大きくなるにつれて、若さがなくなり、経済環境や顧客のニーズの変化にすばやく対応できなくなる。それは何千人、何万人を擁する大企業だけでなく、百人、二百人といった企業でも見られることである。これは結局、社員一人ひとりが自主的かつ旺盛な責任感をもって生き生きと仕事に取り組めていない姿と見ることもできよう。
そうした姿をなくし、社員一人ひとりが生き、活気にあふれた組織にするにはどうすればよいか。それにはさまざまなやり方があろう。たとえば、社員への権限委譲を大幅に行うのもその一つである。年が若くても、経験が浅くても、一つの仕事を任されたら、責任を感じるのが人間である。責任を感じれば、大いに工夫し努力もする。仕事も面白くなり、そこから積極的な行動が生まれ、おのずと組織全体の活力も高まってくるものである。今日、組織を細分化して、“会社の中の会社”を数多くつくるところも見られるが、それは、その責任者に“経営者”としての大きな責任と権限を与えることで、意欲を高め、自主責任経営を引き出そうとしているわけである。
また、人を生かすには、だれもが自由に意見がいえ、自由闊達に仕事ができることも大切であろう。極端にいえば、きょう入ったばかりの新入社員でも社長にものがいえる、そういった風土をつくり、保持していくことによって、一人ひとりが伸び伸びと自主性、個性を発揮できるようになる。
人材の組み合わせ
あるいは、人の組み合わせに配慮することも必要であろう。人は性格も考え方も能力もさまざまである。なかにはどうしてもソリの合わないこともある。そうなると、楽しく仕事ができない。必然的に能率も上がらないし、人も生かされないということになる。また、いわゆる頭のいい人ばかり集まっても、必ずしもうまくいかない例もある。
したがって、社員の採用や配置にあたっては、さまざまな才能、持ち味をもった人を採用し、組み合わせに配慮しつつ、適材を適所に配置していくよう心がけなければならない。いろいろなものの考え方や能力をもった人間が集まり、それぞれの個性が刺激しあい、うまくかみあってこそ、各人の持ち味が発揮され、組織は活性化し、全体としての創造性も高まってくるのである。
人を生かす方法はまだ他にもあろうが、いずれにせよ、人あっての会社であり組織である。人を生かすにはどうすればよいかを、つねに第一義に考え、人が最大限に生きる組織つくりへの努力を怠ってはならない。
◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集
筆者
佐藤悌二郎(PHP研究所客員)
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