本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。
<ゆとりと活力を生む経営>情報を見分ける見識
IT化の時代に留意すべきこと
今日、情報は人、物、金に次ぐ第四の経営資源として、ますます重要になってきている。が、その一方で、現代は、さまざまな情報が氾濫している情報過多の時代でもある。そうしたなかで、いかに生きた情報をすばやく集め、それを取捨選択、分析して、商品開発や販売などに生かしていくか。それが、失敗やロスを最小限に抑え、企業経営を発展に導く大きなカギとなる。
そのようなことから、情報を集め、生かすためのさまざまな努力が多くの企業でなされている。とくに最近は、ITの飛躍的な発展によって、インターネット、イントラネット、POSなどの情報ネットワークシステムの構築が進められ、居ながらにしてあらゆる情報が、迅速かつ大量に入手できるようになってきている。しかも情報化は今後さらに進み、ITを使いこなす会社ほど、市場での競争に優位に立てると考えられる。その意味で、企業は、情報化への投資を今後とも大いに進めていかなければならない。
ただその場合に、留意すべきことがある。それは、"他社がやるからうちも"といったことではいけないということである。やはりまず、何のために情報化投資をやるのかというねらいを明確にしなければならない。そうしてこそはじめて、自社にふさわしいシステムを構築することができるといえよう。
これまで以上に問われる経営者の見識や先見性
そしてさらに忘れてはならないのは、いくら高度な情報システムを構築しても、それを使いこなすのは結局、人間だということである。
情報というものは、利用することによってはじめて価値を生ずる。いいかえれば、情報を価値あらしめるかどうかは、情報を分析し、判断する人のあり方いかんによる。とくに迅速かつ大量の情報処理を生かすには、すばやい決断が要求される。情報をうまく読み取れなければ時代についていけなくなるのである。
これはつまり、これまで以上に、経営者の感性や見識、あるいは先見性、実行力といった能力、資質が問われることを意味している。すなわち、情報化が進めば進むほど、経営者は、みずからの能力、資質の向上に今まで以上に努めなければならないのである。
では、そうしたすぐれた見識や感性、先見性は何から生まれてくるのか。それにはさまざまなことが考えられようが、一つには、しっかりとした哲学なり人生観、世界観というものをふだんから養っておくことであろう。日々の経営に懸命に打ち込むなかで、人間及び人間社会の正しいあり方について、自分なりの哲学を確立するということが、やはり欠かせないのではなかろうか。
◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集
筆者
佐藤悌二郎(PHP研究所客員)
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