本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

<ゆとりと活力を生む経営>正しさに従う

間違ったことは続かない

正しいことをやり続けるかぎり、失敗はない。長続きしないのは、間違ったことをやっているからだ。いかに食べるためであっても、間違ったことをしてはいけない。当たり前といえば当たり前のことだが、これは会社経営において最も大切なことである。つねに正しいことをやっているという自覚が必要だ。

(セコム創業者・飯田亮)


 酒問屋を営んでいた飯田亮氏の生家は、戦時中、統制経済の下にあったため商売にならず、やむなく休業して細々と暮らしていた。

 当時、同じ酒問屋でも、闇屋のようなことをして、相当羽振りのよいところもあったが、飯田氏の父は、「間違ったことは続かないものだ」といって、みずからの行き方を頑として貫いていたのだった。事実、その言葉どおり、それらの店は、二、三年で次々につぶれていったという。

 このような体験から飯田氏は、さきの言葉のような信念をもつようになったということである。

 企業は社会とともに存在する公器であり、経営はいわば公事である。
 ところが、最近、その社会性を忘れ、自社の利益しか考えない姿、企業倫理にもとる姿がまま見受けられる。儲かればいい、たぶん見つからないだろうということで、法にふれる行為を行い、そのことが発覚して、信用を大きく失墜した企業も少なくない。

正しさを見きわめられる見識を養う

 このようなことが起きないようにするためには、やはりまず、経営者・責任者が、"何が正しいか"ということをたえず自問自答し、その正しさに従って行動することが肝要であろう。

 これまでやってきたことだからと、そのままよしとするのではなく、みずからの活動が社会規範や法に反していないか、あるいは業界のため社会のためになっているかどうかといったことをつねに検討する。そして、もし間違っているということであれば、断固としてやらない。併せて社員に対しても、会社が損をしたり不利益を被っても守るべき企業倫理があることをくり返し訴える。

"これは正しいことだ"という信念に立つことができれば、そういったなすべきをなし、なさざるべきをなさない真の勇気が生まれてくる。活動も正々堂々と力強くなって、周囲の信頼も集まるにちがいない。

 ただその場合、自分では正しいと思っていても、それが真に正しくなければ、道を誤りかねない。したがって、これこそが正しいという自分なりの信念をもつとともに、それがほんとうに正しいものになるよう、正しさを見きわめられる見識も、日々の体験のなかで養い高めていく必要があろう。

 規範や倫理がややもすれば軽んじられる風潮にある今、わが社は何のために存在しているのか、何が正しいかということを、いま一度問い直してみたいものである。

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所客員)

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