本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。
<ゆとりと活力を生む経営>真のサービスとは
顧客に喜びを与える
サービスの大切さについては、洋の東西を問わず、すべての経営者がその重要性を語ってやまない。だが、真のサービスとはいったいどのようなものなのであろうか。
OA機器に関するある調査によれば、顧客満足度全体を一〇〇とした場合、商品自体が与える影響は五〇にすぎず、残りの半分は販売店の対応や保守サービスが占めたという。その一方で、品質がそこそこであれば、店の対応や保守サービスは問わず、もっぱら価格の安さを求め、それで満足するといった姿も見られる。
このような状況を見ると、"これこそがサービスなり"と断ずることはできない。しかも、かつては時間をかけて念入りに、きれいに仕上げることがお客さまに対するサービスであったが、今日では、ていねいで、きれいで、しかも速いことが求められているといった面もある。
このように、時代とともに、人々の価値観は多様化し、求めるものはたえず変化している。そうしたなかで、企業、商店は、その変わっていく消費者の志向や要望をつねに的確にとらえ、それに応じたサービスを提供し続けていかなければならないわけだが、たとえサービスの仕方や内容が変わっても、いつの時代も変わらないサービスの基本というものがあるのではないか。それは、顧客に喜びを与える、ということである。
お客さまの立場に立って考える
そのためには、サービスが、何よりも顧客の側から発想された顧客本位のものでなければならない。相手の立場に立って考えなければ、真に喜ばれるサービスを提供することはできないであろう。
そしてさらにいえば、そうした顧客が心から喜び、満足するサービスは、結局、感謝の心があってはじめて生まれてくるものではないか。「道行く人もみなお得意さま」とよくいわれるが、それは、世の中のすべての人にお世話になっている、ご愛顧いただいているという感謝の気持ちが強くあっての言葉であろう。そのような心で顧客に接する、それなくして、いくら接客マニュアルをつくり、従業員に教え、その徹底をはかっても、決して人の心を打つこと、満足を与えることはできないであろう。
心底からお客さま大事と考えてサービスに努め、実践しているかどうか。「お客さま第一」「サービス第一」といっていながら、顧客満足ではなく、自己満足のサービスに終始していないかどうか。
顧客の身、立場に立ったサービス、需要者に喜ばれる真のサービスとは何かということに、いま一度、思いを巡らせてみたい。
◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集
筆者
佐藤悌二郎(PHP研究所客員)
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