本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<真の経営者とは> 先見力をもつ

変化の激しい時代

 急速な技術革新、高度情報化、グローバル化、女性の社会進出、すさまじいスピードで進む高齢化、価値観の多様化など、今、企業を取り巻く経営環境は刻々と変わり、世の中は大きく変化しつつある。

 

 こうしたなかで、企業が発展を続け、永続していくためには、何よりも目先の利害にとらわれず、五年先、十年先を読んだ先見性のうえに経営がなされなければならない。そのうえに立って、適切かつ機敏に変化に対応していかなければ、いかに伝統があり、花形の産業、企業であっても衰退していかざるをえないであろう。とくに変化の激しい今日においては、ひとつ方向を過てば、命取りにもなりかねない。

 

 では、その先見力は、どうすれば養い高めることができるのか。具体的にはいろいろなことが考えられよう。たとえば各種統計や社会のさまざまな現象から時代の趨勢を読み取り、みずからの業種なり企業、あるいは商品の将来について一つひとつ点検してみる。そうすれば、そこから変えるべきもの、変えなくてよいものが、目先の変化に惑わされることなく見えてくるかもしれない。あるいは歴史のなかに示される先例に学ぶことも有効であろう。

 

将来への目標、強い思いがあるかどうか

 だが、そうしたことに加えて、一つ基本的に大切なことがあるのではないか。それは、経営責任者として、自分は将来こういうことをしたいという道にかなった目標、願いをしっかりともつことである。

 

 今日、この変化の激しい社会では、こうなるだろうと思っても、必ずしもそうなるとはかぎらない。だから、“こうなるだろう”ではなく、みずから“こうしよう、こうしたい”という目標、願いをもって、その実現をはかっていくことがむしろ大切になってこよう。

 

 経営者に求められている先見力とは、将来、世の中はたぶんこうなるだろうという単なる予測能力ではなく、あくまでも企業の責任者として、将来はこうありたいという強い願い、目標を掲げ、その実現のために何が必要かを見通す、積極的かつ現実的な洞察力であるともいえる。すなわち、経営者は、現状を分析し、未来を予測する単なるアナリストではなく、ビジョンを掲げ、新しい時代をつくっていこうと社員に呼びかける啓蒙家でなければならないのである。

 

 不透明、不確実の時代といわれるなかで、先が読めないという嘆きをとかく口にしがちだが、嘆く前に、自分には経営責任者として、将来こうしたいという目標、烈々たる思いがあるかどうかをあらためて自問自答してみたい。そこから、半歩先、一歩先を的確に見る目が高まってくるにちがいない。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務取締役)

 

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