トヨタ自動車のような大企業には、傘下に多数の企業がある。その各企業のトップは、グループ内のさまざまな仕事を経験し、経営者としての資質を磨いていく。トヨタの風土が育んだ経営者の一人として、トヨタ部品群馬共販の山口晋二社長(「松下幸之助経営塾」塾生)にみずからの人生の変転とその経営哲学を語っていただいた。
◆PARTS&HEARTSを継承して理想の商売を!(2)からのつづき
志を立てる
志を同じくする人たちと一緒にお客様のために仕事をする
群馬県内に自動車整備事業者は二〇〇〇社以上ある。そのうち約一〇〇〇社がトヨタ部品群馬共販の直接のお取引先になる。
山口さんは二〇一五年八月から五カ月かけて、営業スタッフのハイエースの助手席に乗り、四〇〇社以上も訪問を重ねてきた。そのなかには、整備を仕事にしている会社でありながら、店舗の整備がまるでできていない会社もあった。
現在は、そうした会社に対して何かを言える立場にはないものの、今後は関係を深めることで、そうしたお取引先に対して、耳の痛いことも言える関係になりたいと山口さんは思っている。
「何のためにこの仕事をやっているのか」を突き詰めていけば、自動車整備事業者も、当然トヨタ部品群馬共販も、自動車ユーザーである一人ひとりのお客様の安心安全で快適なカーライフのために仕事をしていると言える。
ならば同じ目的、同じ理念を共有するもの同士、志を同じくするもの同士、お客様に対して、よりよいサービスを提供していきたい。
トヨタ生産方式の原点は、倉庫や物流にあると言われるが、自分たちのビジネスの現場も、まさにこの倉庫や物流である。「ムダをムダと気づく能力」を研(と)ぎ澄ますことができれば、まだまだお客様のためにできることはたくさんある。そのために、日々、努力を重ねていこう。
トヨタ部品群馬共販では、先々代の社長より「PARTS(パーツ)& HEARTS(ハーツ)」という理念を掲げている。パーツ(部品)だけでなく、ハーツ(心)もお届けするのがモットーである。
この「PARTS & HEARTS」のロゴや看板を見て、「ああ、この会社なら車を任せても安心だ」と一人ひとりのお客様に思われるようになり、ひいては、自動車整備事業者に「PARTS & HEARTS」のロゴや看板を掲げたいので取引してほしいと言われる存在になりたい。これこそ山口さんの悲願である。
「松下さんが言われたように、『企業は公器』です。利益をあげるのが目的でもなければ、会社を大きくすることが目的でもありません。『部品販売というビジネスを通して、お客様のために何ができるのか』をこれからも考え続けることで、お客様のニーズを先回りして実現していきたいと考えています」
山口さんはこのように自社のあり方とその強みをよくよく吟味し、みずから思う理想の姿をめざして日々、陣頭指揮を執っている。
経営を任されている期間、与えられた職分に全力を尽くすつもりだ。その志はトヨタ自動車グループの風土にあって、山口さんが過去のすべての経験からみずから築き上げ、醸成されたものに違いない。
玄関にはトヨタ部品群馬共販の経営理念
(おわり)
◆『PHP松下幸之助塾』2016.3-4より
山口晋二(やまぐち しんじ)
1959年生まれ。東京工業大学生産機械工学科卒業後トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)に入社。ベルギー、米国駐在を含め主にアフターサービスの領域でキャリアを重ね、2014年トヨタ部品群馬共販に転籍。'15年6月から同社代表取締役。
トヨタ部品群馬共販株式会社
[代表取締役]山口晋二
【本社】〒370-3522 高崎市菅谷町20番地302
TEL 027(372)1121(代表)
FAX 027(372)6939
設 立...1981年8月
資 本 金...1億円
従業員数...約190名
事業内容...自動車補修用部品・用品の卸売
会社URL...http://www.gunma-kyohan.co.jp/index.php