松下電器テレビ事業部門は、ナショナルテレビ生産1,500万台を記念して、大阪万博松下館に出展したタイムカプセルの模型と3.1×2.3センチのミニチュア版『道をひらく』(写真)を作成しました。

 タイムカプセルの模型は、入れ子の最後にミニチュア版が出てくる構造であり、昭和45(1970)年1月21日から3カ月間、カラーテレビ「パナカラー」を購入した顧客に記念品として配られたほか(※1)、大阪万博開催中に松下館を訪れた要人にも贈呈されています(※2)。ミニチュア版『道をひらく』に記載されている内容は通常の『道をひらく』と同じであり、ルビも印刷されました。記念品につけられた「ご挨拶」によれば、特殊印刷技術を駆使してこの大きさが可能になったとのことです。


 ミニチュア版の奥付には、「昭和45年1月1日特別号発行」と記されており、著者は「松下幸之助」、発行所は「PHP研究所」となっています。当時の『道をひらく』は日本写真印刷で印刷していましたが、ミニチュア版は凸版印刷の協力を仰ぎました。


 大阪城前に埋設されたタイムカプセルには、通常版の『道をひらく』のほか、このミニチュア版とタイムカプセルの模型も納められました(※3)。実際のタイムカプセルの中は28の内箱に分けられていて、ミニチュア版は月刊誌『PHP』と一緒に印刷物が集められた内箱に入っています。専門家による技術的な検証によって5,000年後でも「白地に黒い文字を印刷している限りでは、その文字が消えたり見えなくなるほどには劣化が進まないであろう」(※4)と予想されました。


 ゴムやビニールなど、劣化によって他の収納品に影響を及ぼす可能性のあるものは、まずガラス管に納められ、さらに金属箱に入れられて溶接で密封されました(※5)。ビニール製のカバーがついている通常版の『道をひらく』はこの密封された内箱に入っており、長年のうちに劣化することが懸念されています(※6)。ミニチュア版の方が、5,000年後まで比較的良好な状態で残る確率が高いようです。 



1)松下電器テレビ事業部門編・発行『テレビ事業部門25年史』(1978年)186~187頁。
2)タイム・カプセルEXPO'70記録小委員会編『TIME CAPSULE EXPO'70記録書』(松下電器産業発行、1975年)136頁。
3)同上134、136頁。
4)同上174頁。
5)同上41頁。
6)同上175頁。