Q107:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
昭和51(1976)年、製品にたびたび不良が出ていたときのこと。製品検査本部長が設計や試作の段階で製品を審査していると説明したところ、幸之助は「それが不良を生んでいる原因である」と述べました。なぜでしょうか?
(1)設計図や試作品はあてにならないから
(2)製品検査本部は製造の専門家ではないから
(3)製造部門が命がけで物をつくらなくなるから
解答&解説コラム
(3)が正解です。
昭和51(1976)年11月、製品にたびたび不良が出ているのを憂慮した幸之助は、製品検査本部長を呼んで審査のやり方を質します。本部長は「不良の原因を分析してみると、設計や試作の段階ですでに問題が出ていたので、製品をつくる前に審査するようにしています」と答えました。
しばらく考えていた幸之助は、途中の審査はいっさいやめて、最終段階で行うよう指示。製品をまさに販売しようというときにストップをかけたら莫大な損害が出るといって反対する本部長に対し、こう言ったのです。
「君のその考え方が不良を生んでいるのだ。君がそうすることで、本来命がけで物をつくらねばならない事業部長が製品検査本部に依存することになる。それではいい物ができない。確かに最終段階でストップがかかれば莫大な損害になるが、命がけで物をつくったらそんなことは滅多に起こらん。また、万一損害が出ても、製造部門は二度とそのような愚を犯さないようになるよ」
本部長が幸之助の意をくんで製造部門を説得してまわり、最終段階でのみ審査する体制にしたところ、やがて不良は激減したのでした。