Q114:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
戦後、ある工場長が、不良品を業者にクズとして処分させたところ、それが商品として市場に出回ってしまったことがありました。幸之助はなんと言って叱責したでしょうか?
(1)「きみは松下の事業精神を冒涜した」
(2)「きみは業者の見分け方も知らないのか」
(3)「きみは松下のほかのお得意先に迷惑をかけた」
解答&解説コラム
(1)が正解です。
戦後、松下電器でもっとも多くの赤字を出していた真空管工場には、商工省の品質検査により、二級品の判を押された真空管の在庫が3万本ほどありました。二級品は販売できない決まりだったため、工場長が処置に困っていると、ある業者がクズとして100万円で買いたいと申し出ます。工場長はこれ幸いと売り払い、その利益を従業員の給与資金に回しました。ところが、しばらくしてその真空管が、松下によく似たマークをつけてあちこちの店で売り出されたのです。
幸之助は工場長を呼び出し、商品を横流ししたのか質します。工場長が事情を説明して、「給料を払えず、材料も買えません。1銭でも回収したいと思って売りました」と苦しい胸の内を明かすと、幸之助は次のように言いました。
「確かに真空管の工場は赤字が続いている。しかし、なんとしてでも真空管を成功させたいと思うがゆえに、きみに対してこれまで文句を言ったことはないではないか。きみは、たかが100万円のために、松下の事業精神を冒涜したのだ。事業というものは、1銭の金も惜しんで経営すべきものである。しかし、時と場合によっては、100万円を惜しんではならないことがあるんだぞ」
幸之助は、どんなに経営事情が苦しくても、お客さまに満足していただける良品しか売らないという、商売人としての志、心持ちを堅持することの大切さを訴えたのです。