Q118:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?

昭和11(1936)年のこと。ある新入社員が、希望とは異なる職場へ配属されたので、「松下電器はひどい会社だ」と幸之助に訴えたことがありました。幸之助はどのように対応したでしょうか?

(1)人事責任者を呼んで事情を聞いた

(2)社員が行きたかった部署への異動を認めた

(3)10年間は辛抱しなさいと説いた

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解答&解説コラム

 (3)が正解です。

 松下電器が9つの分社に分かれていた昭和11(1936)年、分社の一つ、松下乾電池の新入社員と幸之助の座談会が開かれました。その席で一人の社員が、「私は会社を辞めようと思ったんです。松下電器はえげつない会社です」と発言します。アマチュア無線のライセンスをもっていたその社員は、松下無線の専務が自分の学校に求人に来たので、当然、志望先の松下無線に入社できると思っていたというのです。意に反して松下乾電池にまわされたばかりか、現在の職場はもっとも汚れの激しい調合場で、全身が真っ黒になるとのことでした。
 社員の率直な訴えを聞き、幸之助は次のように答えました。

 

 「それは考えと違ってえらいところへ来たな。だが、松下電器はいい会社やで。きみ、わしにだまされたと思って10年間辛抱してみい。10年辛抱して、それでも今と同じ気持ちやったら、わしのところに来て、頭をポカッと殴り、『松下、お前はおれの青春10年間を棒に振った!』と大声で言って辞めたらいい。わしは殴られん自信をもっておるんや」

 

 人生においてはどんな体験も貴重な財産になる。また、たとえ希望通りの仕事ではなかったとしても、それに打ち込むうちにみずからの新たな適性を見出し、やりがいが感じられるようになることもあるというのが、幸之助の基本的な考えでした。実際、20年ほどのち、その新入社員は松下乾電池の工場長になったということです。