Q120:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?

戦前のこと、ある製造部長が出社すると、自分の机がなくなっていました。上司の事業部長から、一方的に倉庫係へ異動させられたのです。理不尽な扱いに不満を訴える部長に対し、幸之助はどのように説いたでしょうか?

(1)悪い主人からも学べることはある

(2)不満は上司に直接言うべき

(3)社員である以上、異動はやむを得ない

矢印(下).png

解答&解説コラム

 (1)が正解です。

 戦前のこと、製造部長が出社したところ、自分の机はおろかロッカーまで姿を消していました。以前から意見が合わず、よく対立していた上司の事業部長が突然、倉庫係への異動を決めてしまったのです。4~500人いた部下は2人に減ってしまいました。部長は、一度は会社を辞める決心をしたものの、日本一の倉庫にしてからでも遅くないと思い直し、毎朝5時から倉庫にこもり、合理化、改造に取り組み始めました。
 そんなある日、工場にやってきた幸之助に、「こんなところで何をしている」と尋ねられます。彼はここぞとばかり左遷された事情を説明し、事業部長との意見の相違を訴えました。すると幸之助はその言葉を制して、次のように言ったのです。 「きみ、いろいろ言いたいことはあるやろうけど、人間、大成しようと思えば、どんな主人に仕えても勉強になる。よい主人なら見習えばいい。悪い主人なら、こないしたらあかん……とな」
 幸之助は、「無理解、非常識ともいえる先生のもとで、ほめられていいこともめちゃくちゃに言われるのを耐えしのびつつ辛抱して修業する。その中で何ものかをみずから会得した人に、先生を超える名人が出てくる」として、無理解な上司や先輩にぶつかったときは“名人になれるチャンス”と、積極的に受けとめることが人間としての修養につながると考えていました。
 この製造部長の人事は、のちに幸之助の預かりとなって落着いたといいます。