Q123:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?

昭和44(1969)年6月、幸之助はハンブルク松下電器の駐在員に対し、ヨーロッパの販売網を強化するため、商品を売る前にあるものを売ってほしいと言いました。それは何でしょうか?

(1)日本の伝統工芸品

(2)松下電器の経営理念

(3)ナショナルというブランド名

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解答&解説コラム

 (2)が正解です。昭和44(1969)年6月のこと。ヨーロッパ視察のおり、ハンブルク松下電器を訪れた幸之助は、日本から出向している駐在員たちと懇談の場を設けます。当時、松下電器で競争力のあった商品は乾電池のみで、現地では総じて厳しい状況が続いていました。幸之助は「今後3年間で他のメーカーに負けない商品をつくろう。これはぼくの約束だ」と述べます。駐在員にとっては嬉しく、ありがたい言葉でした。

 ところが、さらに幸之助は続けます。「それまでに販売網を強化してほしい」。矛盾を感じた駐在員の1人が、「売れる商品がないのに、どうやって販売網を強くするのですか。強い商品があって初めて強い販売網ができるのではないでしょうか」と質問しました。

 すると幸之助は、駐在員たちを見まわしてこう言ったのです。

 「商品を売る前にきみたちに売ってほしいものがある。それは松下電器の経営理念だ」

 

 当初、駐在員たちはこの言葉の真意をはかりかねたといいます。しかし議論を重ねる中で、取引先と商品だけでつながった関係は、商品が他社に負ければ失われてしまう。まず松下電器の考え方、精神を理解、共鳴してもらってこそ長く続く真の信頼関係が結ばれる。それが「商品を売る前に経営理念を売る」ことだと思い至りました。駐在員たちの懸命な努力の結果、松下電器はやがてヨーロッパで確固とした基盤を築くことができたのです。