Q142:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
松下電器が真空管50万本の月産に成功し、業界トップだったT社を上回り日本一になったときのこと。喜びに浸っていた責任者へ、幸之助は「T社は○○、松下電器は○○」と話しました。○○に入るのは?
(1)ウサギ・カメ
(2)ネコ・ネズミ
(3)ニワトリ・タマゴ
解答&解説コラム
(2)が正解です。昭和20年代、松下電器が真空管50万本の月産に成功し、業界トップだったT社を上回り初めて日本一になりました。その祝杯をあげているところへやってきた幸之助は、担当責任者を呼び、「きみは楠木正成の戦の仕方を知っているか」と尋ねます。意味をはかりかねている責任者に、幸之助は説きました。
「名将である楠木正成は、戦のとき、敵の逃げ道をつくって戦っていた。T社の真空管事業歴35年に対し、わが松下は4、5年である。どちらの生産力、技術力が上かは明白や。T社がネコだとすれば、松下はネズミやな。しかし、今きみは、T社を追い抜いたと得意になって喜んでいる」
まだよくわからず、怪訝な顔をしている責任者に、幸之助は続けます。
「ネズミはネコには勝てん。T社は必ず手を打ってくるはずや。きみに真の経営的考え方があるなら、T社が100万本つくるところ、うちは99万9千999本に甘んじる。そういう心の余裕を持たなあかんのや。事業というものは、力任せにやればいい、売れればいいというものではない」
ようやく責任者は、分に応じた堅実な仕事を心がけるべきだという幸之助の真意を理解したのです。幸之助が懸念したとおり、T社は翌月から真空管を増産し、松下の生産量日本一はたったのひと月に終わりました。