Q146:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
戦後の混乱期、原材料が不足していたこともあり、松下電器でも乾電池にたびたび不良が出ていました。乾電池工場を訪れた幸之助は、責任者から不良の状況について説明を受けると、その後どうしたでしょう?
(1)自ら原材料を集めに回った
(2)工場の全従業員を集め、奮起を促した
(3)不良の乾電池を持ち帰って直した
解答&解説コラム
(3)が正解です。第二次世界大戦後の混乱期には原材料が乏しく、松下電器の乾電池にもたびたび不良が出ていました。乾電池工場を訪れた幸之助は責任者から状況の説明を受けると、不良の乾電池を2、3ダースとコード付きの豆電球を10個ほど持ち帰ります。
翌早朝、幸之助は電話で責任者を自宅に呼びました。責任者が訪れると、あかあかと豆電球をつけた乾電池がずらりと並んでいます。驚く責任者に、幸之助は言いました。
「きみはアンペアが低いからあかんと言うとったけど、みな直るで。物というのは、じっとにらめっこしていれば、そのうち"どんなにしてくれ、こんなにしてくれ"と言いよるもんや。昨夜、わしが電池を前に置いてしばらく見ていたら、"炊いてくれ、炊いてくれ"と言うので、コンロで湯を沸かして温めた」
見ると、確かに、横にコンロと手鍋が置かれています。
「自分が一所懸命につくったものを抱いて寝るくらいの情熱をもって見とったら、それは必ず何かを訴えよる。わしみたいに電池の理屈をよく知らん者にでも、解決方法が見出せる。きみらは屁理屈ばかり言ってるけど、言うだけやなしに実際にやらないかんのやで」
頭から冷水を浴びたような思いで工場に帰った責任者は、早速すべての乾電池の再処理を行ない、大量不良を防ぐことができたのです。後年、この責任者は「何事も素直に真剣に向き合えば、自然とその物の本質、本性が伝わってきて、無理なく適切に対処できるのだとつくづく実感した」と語っています。