Q153:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?

戦時中、信託会社の社員が工場を売り込むため、幸之助を訪ねました。幸之助はその青年の熱心さに引かれ、特にある一言が印象的だったといいます。「自分は○○の心持ちになって仕事しています」。○○に入る言葉とは?

(1)相手

(2)新米

(3)社長

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解答&解説コラム

 (3)が正解です。当時、ある信託会社の若手社員が、東京にある工場を売り込むため幸之助を訪ねました。幸之助は、工場の経営を引き受けることの意義について諄々と説くその青年の熱心さに引かれ、「あなたが松下電器に入社してくれるのであれば、買いましょう」と申し出たのです。

 

 青年は即座にこう答えました。

 

 「せっかくのお話ですが、私は他の会社へは行けません。なぜなら、私はいま弊社で社長のつもりで仕事しているからです。身分は社員ですが、心持ちは社長です」

 

 幸之助はこの言葉にすっかり感心し、工場よりもむしろ青年のことがますますほしくなりました。そこで、松下電器社員として正式にもらいうけようと、信頼できる人を間に立てて交渉した末、信託会社の社長から承諾を得たのです。青年は松下電器で部長として活躍したのち、独立し証券会社を立ち上げ、文字通り社長となり成功しました。

 

 幸之助は松下電器の社員へ向けて、"社員稼業"という考え方を提言しています。「皆さんは単に社員の一員として漫然と働くにとどまらず、社員という一つの稼業を営む経営者であるといった考えに徹してみてはどうか。そうした姿勢から創意工夫も生まれ、自分の仕事は充実し、会社や世の中を発展させていく」。上述した青年の態度は、まさしく幸之助のわが意を得た社員稼業のエピソードだと言えるでしょう。