Q156:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
昭和25(1950)年ごろ、松下電器の北海道営業所がお得意先を招き、温泉地での懇談会を催しました。その際、ある場所での幸之助の振る舞いが一人の店主を感激させ、その後の態度を変えてしまいます。どこだったでしょう?
(1)風呂場
(2)宴会の席
(3)宿の玄関
解答&解説コラム
(1)が正解です。松下電器の北海道営業所が温泉地にて、代理店、販売店を招いての懇談会を行ないました。翌朝早く、営業所の社員が風呂へ行くと、社長として出席していた幸之助の姿があります。「昨夜はお疲れ様でした。お背中を流しましょう」と申し出ると、幸之助は「ありがとう。けれどもそこにお得意様がおられる。その方を先に......」と言いました。よく見ると確かに、湯煙の向こうにある販売店の主人が入っています。社員はその言葉に従いました。
実は、そのお得意様は他社の専売店で、営業に行ってもなかなかナショナル製品を置いてくれないところでした。数日後、営業所にその主人から「すぐ来てほしい」との電話が入ります。訪問した社員は、店頭にナショナル商品がずらりと並べられている光景に驚きました。
「わしは風呂での松下さんのご厚意にすっかり感激した。きょうからわしは、ナショナル商品でなく松下幸之助を売る」
社員は後年、「お得意様にはこういうおもてなしをしなくてはいけないと如実に教えていただいた、生涯忘れられない思い出である」と振り返りました。常々、商売を進める上で大切なことは、お得意先にどれほど喜ばれ、感謝されるかだと語っていた幸之助が、お客様大事の心を体現したエピソードだと言えるでしょう。