Q159:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?

昭和39年から40年にかけての深刻な不況により、松下電器の販売会社、代理店の多くは赤字経営に陥りました。その苦しい時期に、幸之助は心のよりどころとしてある浪花節を聴いています。それは何でしょうか?

(1)『紀伊国屋文左衛門』

(2)『水戸黄門漫遊記』

(3)『紺屋高尾』

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解答&解説コラム

 (3)が正解です。昭和39年から40年にかけ、電機業界は深刻な不況に直面し、松下電器の販売会社や代理店の多くも赤字経営に陥りました。松下電器は業界を立て直すため、新販売制度を打ち出します。幸之助自身も各地のお得意先に出向き、新制度の趣旨を説明し、協力を求めました。反対者に対しても、根気強く説得を続けたのです。脈が結滞することもあり、苦しい時期でした。

 

 そんなあるとき、幸之助は秘書に、「浪花節の『紺屋高尾』が聴きたいからレコードを買ってきてくれ」と頼みます。それはこのような話でした。

 

 紺屋の染物職人、久蔵は江戸吉原の高尾太夫の花魁道中を見て、その美しさに心を奪われます。高尾太夫は江戸吉原のナンバーワンです。それでも久蔵は、"何としても一夜の情けにあずかりたい"と決心し、3年間一心不乱に働いて15両という大金を貯めました。それを見事、一夜で高尾のために使い果たします。その一途さに心打たれた高尾は、のちに久蔵と結婚したのです。

 

 幸之助は若いころにこの話を聞き、"自分はそんな潔いことはできない。久蔵のほうが上だ"と感心します。はたから見ればばかばかしいと思われること、困難なことでも、自分がやると決めたことに命がけで邁進する心意気に感動したのでした。幸之助は、「人は一度志を立てても、苦しい思いをすると心が弱くなり、志を失いがちになる。ぼくにもそうした経験がある。そんなとき、この話に励まされたものだ」と述べています。