Q162:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
昭和4年ごろ、ある問屋の主人が松下電器の店員に対し、激しい口調で製品の苦情を言いました。その後、主人は松下電器の対応に驚かされます。それはなぜでしょうか?
(1)店員が苦情を直接幸之助に報告したから
(2)改良した製品を早速持ってきたから
(3)賠償金を支払ったから
解答&解説コラム
(1)が正解です。昭和4(1929)年ごろ、松下電器は従業員4~500人の町工場に成長し、世間からの信用も増しつつありました。ある日、店員の一人が得意先回りである問屋を訪れると、主人が非常に立腹しており、こう言ったのです。
「松下の品物を小売店に売ったら、評判が悪いと返された。こんな品物をつくるくらいなら、電器屋などやめて焼きいも屋でもやれ。帰ったらオヤジにそう言っておけ!」
店員は幸之助にそっくりそのまま報告しました。幸之助は、早速みずからその問屋を訪問し謝ります。問屋の主人は恐縮しました。
「恐れいった。腹立ちまぎれに強く言ったのだが、お宅の店員が私の言ったことをそのままあなたに伝えるとは思わなかった。失礼した。腹を立てないでくれ」
「とんでもありません。今後はよく注意して、なおいいものをつくります」
このことが転機となり、主人は松下電器への信頼を深めました。
幸之助はこのエピソードについて、著書『商売心得帖』の中で次のように語っています。
「私は店員に、どんなに否定的なことでもありのまま報告するよう言い聞かせてきた。いやな話ほど、反省すべき点、改善すべきところを含んでいるものだ」
手を打つべきことが瞬時に首脳者へ伝わる、打てば響くという組織風土をつくることが、事業や商売を進めていく上で肝要だと述べているのです。