Q163:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?

昭和58(1983)年4月、幸之助が若手経営者の前で講演したときのこと。みずからの理念の根幹とも言える「新しい人間観」について説明すると、「それは松下電器の中でどのように実践されていますか」と質問されました。幸之助は何と答えたでしょうか?

(1)社員によって読書会が開かれている

(2)社員は理解していない

(3)若手社員だけは好意的だ

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解答&解説コラム

(2)が正解です。

 昭和58(1983)年4月、世界各国の若手経営者が東京のホテルニューオータニに集まり、YPO(Young Presidents Organization)の世界大会が開催されました。当時88歳だった幸之助は、講演の冒頭で、みずからの理念の根幹とも言える人間観、「新しい人間観の提唱」を秘書に読み上げさせました。

 その後の質疑応答で「新しい人間観は松下電器の中でどのように実践されているのでしょうか」と質問されると、次のように答えています。

 「これが松下電器で実践されているかというと、そんなことはありません」
 会場から笑いがもれ、さらにつぎのようにつけ加えました。

 「こういうことは、近くにいるものは分からないのです。かえって遠くにいる人のほうが早く理解し、最後にひざ元にいるものが理解する。日本のことわざで『灯台下暗し』という言葉があります。だから優れた理念を言う人がいても、その部下は反対したりするものです」

 続けて幸之助は、イエス・キリストや釈迦を例に出しました。生前は必ずしも多くの人に認められたわけではないが、死後にその理想はより多くの人に支持されました。それと同じことだというのです。しかし「新しい人間観」はキリスト教や仏教ほど大きな話ではないので、世間で認められるのに、それほど時間はかからないだろうとも述べています。