Q171:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
松下幸之助が参入に約20年もの歳月を費やした産業は、次のうちどれでしょうか?
(1)ラジオ
(2)出版
(3)レコード
解答&解説コラム
(3)が正解です。
戦前からラジオを聴くのが好きだった松下幸之助は、番組を手軽に録音できたら便利だと考え、昭和10(1935)年ごろ、レコード業界への参入を考えました。
当時のレコード盤は戦後に普及したポリ塩化ビニール製ではなく、様々な材料を混ぜてつくっていました。松下電器ではその材料が分からず、どうしても一級品のレコード盤をつくることができません。当時、一級品をつくっていたのは、現在の日本コロムビアと、日本ビクターの2社だけです。また、中身が空のレコード盤を録音用に使いたいという需要はそれほど多くなく、歌手を発掘・育成して歌を録音し、広く売り出すことまでがレコード会社の重要な仕事だと分かりました。当時の松下電器でこうしたことを行なうのはむずかしく、レコード業界への参入を一度は断念します。
しかし、それからおよそ20年後の昭和29(1954)年、幸之助は、日本ビクター(現JVCケンウッド)が苦境に立っているとの情報を得て、会計資料などを見るだけで、現地視察もせずに、1週間で再建の引き受けを決定しました。あと少し決断が遅ければ、アメリカの会社に先を越されていたと言われており、1週間で決断できたのは、戦前にあらかじめこの業界を詳しく調べていたからだと幸之助は説明しています。