Q19:幸之助は日本の伝統精神として大きく3つを挙げました。その1つ目の○○に当てはまるのは?

「○○を集める」

 (1)権力

 (2)人材

 (3)衆知

矢印(下).png

解答&解説コラム

 (3)の「衆知」が正解です。幸之助は自著『実践経営哲学』で、「衆知を集めた」全員経営は「私が経営者として終始一貫心がけ、実行してきたことである。全員の知恵が経営の上により多く生かされれば生かされるほど、その会社は発展する」と記し、衆知経営の大切さを説いています。ただ今回の「衆知を集める」は、そうしたマネジメント上の勘所ではなく、日本の伝統精神としてのものです。時代をこえて脈々と受け継がれる代表的な日本人の特質として「衆知を集める」を幸之助は最初に挙げたのです。


 この見解は『日本と日本人について』という著書に明示されています。幸之助は、古事記や日本書紀にみられる神話の時代から、戦国時代、明治期にいたるまでの日本史を通覧、そこに通底する日本人の姿、精神を抽出しています――八百万の神々(日本人の先祖と幸之助は考えた)が天照大神のもとで衆議を重ね、事を決したこと。ワンマンにみえる織田信長が木下藤吉郎などの家来の意見に耳を傾けていたこと、等々――。その上で、“日本人”の体験のなかに「衆知を集める」という精神の共通性と持続性を嗅ぎとったのです。加えて、過去の先達の知恵、海外の文化・先進技術を広く受け入れ、生かすことにも日本人は秀でていると述べています。


 そして当の幸之助も、その伝統精神を継承する一人の日本人でした。幸之助が実践した衆知経営とは、すなわち日本の伝統精神の上にたって、日本人の特質を生かすことでもあったのです。ただし本人は、自分には学問、知識がなかったから、「必要に迫られて」、従業員皆に相談し、皆の知恵を集め、衆知経営を実践したのだと述懐しています。