Q21:幸之助は日本の伝統精神として大きく3つを挙げました。その3つ目の○○に当てはまるのは?
「○を貴ぶ」
(1)和
(2)義
(3)信
解答&解説コラム
(1)の「和」が正解です。この幸之助が挙げた3つ目の日本の伝統精神は、もちろん聖徳太子が定めたとされる十七条憲法の「和をもって貴しとなす」に基づくものです。
幸之助は、自著『日本と日本人について』(1982刊)に「平和の精神、和を貴ぶ心は、日本においては、すでに千三百年前に、国家の基本の法律である憲法の、しかも第一条にはっきり掲げられている」と明記しています。そして、和を重んじた、争い・戦争のない社会を築くためにも「つねに『和をもって貴しとなす』という気持ちをもっていることが大切」である。その気持ちを強くもてば、争いのもとになる人間の欲望が適当に制御され、むしろ向上発展の原動力となり、個人・集団にとって好ましい姿が生みだされる。しかも日本の歴史を俯瞰してみると、「そういう考えが、日本人の伝統の精神として知らず識らずのうちに培われてきたのであり、それが太子によってはっきりと認識され、さらに仏教や儒教という立派な教えに照らして考えられて、憲法の第一条に明記されたのではないか」と述べているのです。
たしかに戦国時代あり、第一次・第二次世界大戦ありと日本につねに平和が保たれていたわけではありません。しかし250年もの長きにわたり太平の世が続いた江戸時代に代表されるように、総じてみれば、根本に平和を愛し、貴ぶ伝統精神が日本人にあったことを幸之助は看破したのです。そして幸之助自身もその伝統精神を受け継ぐ一人として、和の実現をはかりつつ、経営を進めていました。たとえば幸之助が制定した松下電器の経営基本方針として、いまもパナソニックに継承されている「遵奉すべき7つの精神」の3番目に「和親一致」が掲げられています。そこには「和親一致は既に当社信条に掲くる処個々に如何なる優秀の人材を聚むるも此の精神に欠くるあらは所謂烏合の衆にして何等の力なし」という、幸之助の「和を貴ぶ」精神が謳いあげられています。