Q34:「素直な心」のない場合の弊害として幸之助が挙げた10カ条の10番目に当てはまるのは?

「○○○が低下する」

 (1)生産性

 (2)合理性

 (3)消費力

矢印(下).png

解答&解説コラム

 (1)の「生産性」が正解です。素直な心のない人は、自分の立場、利害得失にとらわれがちになる。すると相手に対する配慮が薄くなり、譲るべき場合でも譲らない。許すべきであるのに許さない。守るべき約束を守らない。何かにつけてとがめだてをする。疑いの目で見る……。そうした姿に陥れば、そこにはギクシャクした人間関係が生まれ、ムダや非能率に結びつくことになり、往々にして「生産性の低下」を招いてしまう、というのです。


 ここで幸之助のいう「生産性」とは、実際の経営で使われる生産性とは少し意味合いが違っています。戦後にPHP研究をはじめてから、幸之助にとって「生産」とは、物資をつくることのみをさすのではなく、物心両面にわたるものでした。その証左に、お互い人間が相寄って思いを交わすという一つの心の働きのなかで「よい思いが通い合えば、それはよき心の生産であり、悪い思いが通えば、悪い心の生産」であるといっています。


 また、生産労働に従事する人間を単なる「生産要素」や「資源」とみなすこともできるのでしょうが、幸之助にしてみれば、人間はやはり「人間」であり、人間同士が力を合わせ、心を通い合わせ、知恵をつくして何かを生みだすことが「生産」だととらえていました。その「生産」をスムーズに進めて、一人ひとりが自らの努力に相応しい成果を得つつ、豊かな共同生活を実現していくために、お互いが素直な心を高めあうことの必要性を説いたのです。


 ちなみにほかの9カ条として、「衆知が集まらない」「固定停滞」「目先の利害にとらわれる」「感情にとらわれる」「一面のみを見る」「無理が生じやすい」「治安の悪化」「意思疎通が不十分」「独善に陥りやすい」が挙げられています。