Q57:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
五代自転車商会に奉公していた13歳のころ、初めて一人で自転車を売り込みに行った幸之助は、先方の主人から「1割引きで買ってやろう」という返事をもらいました。ところが帰って店の主人に伝えたところ、「いっぺんに1割引きにするのはダメだ。5分引きにしなさい」と言われます。そこで幸之助はどのような行動をとったでしょうか?
(1)主人に従って、「5分引きにさせてください」と先方に言いに行った
(2)自分の主人に、「お客様の要望どおり、1割引きに負けてあげてください」と頼んだ
(3)先方には1割引きで売って、足りない分の金額を自分の給料からこっそり出した
解答&解説コラム
(2)が正解です。
ある時、同じ船場の蚊帳問屋から、「自転車を見せてくれ」という電話が入りました。たまたま番頭が不在だったため、幸之助が初めて一人で自転車を持って行くことになります。一所懸命に自転車の性能を説明する幸之助を見て、先方の主人は「熱心な小僧さんやな。買ってやるから1割引いておけ」と言いました。
幸之助はそれを了承し、自転車が売れた嬉しさに、意気揚々と店に帰り主人に報告したのですが、「はじめから1割も引いてどうする。5分だけ引くと言ってきなさい」と命じられます。しかし幸之助は、いったん約束した以上、5分引きにさせてほしいと言いに行くのがどうしてもいやで、「1割引きにしてあげてください」と泣きながら懇願したのでした。
すると、幸之助の様子を伝え聞いた先方の主人が「面白い小僧さんだ。彼に免じて5分引きで買おう」と応じ、さらに幸之助に、「おまえがいるうちは、自転車は五代で買う」と約束してくれたのです。幸之助はこの出来事によって、商売は価格よりも相手の心を打つ誠意が大切であることを学んだと述べ、生涯忘れられない思い出であるとふり返っています。