昭和四十八年七月、幸之助は会長を退任し、相談役に就任した。そのときの記者会見で、「今の感慨は?」と問われ、つぎのように答えた。

 

 「まあ非常によかったという感じで、今、胸がいっぱいです。五十五年というと相当長い期間でございますが、その間、第一、体がよくもったということですな。そういうことで、現業に立って五十五年、無事に務められたということは、これは非常に私個人にとって結構なありがたいことであったと、こういうように思います。
 まあ“自分ながらよくやったな”ということで、自分の頭をこうなでてやりたいような感じですな」