松下幸之助の人生・仕事観
苦労は買ってでも……
松下幸之助は9歳のときに丁稚奉公に出されました。それは幼い幸之助にとってつらい経験でしたが、そのなかで商売のイロハから人としてのあり方まで多くのことを学びました。この厳しい経験がのちの成功につながったのです。著書『社員稼業』で、こう述べています。
「苦労を厭うというような惰弱なことではいけない。苦労はすすんでしなければならない。苦労は買ってでもしなければならない。そうしてこそ真人間になるのだ。ほんとうの筋金入りの人間になるのだ。単なる知識、学問ではいけないのだ。それを超えた強いものを心の根底に培って初めて諸君が習った知識なり学問が生きてくるのだ。その根底なくしては学問、知識はむしろじゃまになるのだ、諸君の出世のじゃまになるのだ――こういうような教えを、私は聞いたことがあります。
そのときは、非常にひどいことをいうな、という感じもしたのですが、長い人生を経て、今かえりみますと、その言葉のいかに尊いものであるかを、しみじみと味わうのです」
人は困難に出遭ってこそ、つらさや厳しさに立ち向かう強さとそれを乗り越える力を身につけることができます。長い人生からみれば、困難は貴重な機会だと前向きにとらえるべきでしょう。
松下幸之助の「人生・仕事観」については、「仕事のコツ・人生の味」という副題のついた『社員稼業』のほか、累計520万部を超え、戦後日本のベストセラー第2位の『道をひらく』がその真髄を余すところなく伝えています。さらに『私の行き方 考え方』では、幸之助の半生を知ることができます。