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遺論・繁栄の哲学
"国是が忘れられている""教育はいかにあるべきか"など、今日論じられている問題は、松下幸之助が日本の行く末を憂い警鐘を鳴らしてきたことに他ならない。国事多難の今、改めて耳を傾けたい国策提言の書。
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松下幸之助は政治に強い関心をもっていました。そして、国家にも経営の視点が必要で、政治も企業経営と同じく効率化を図るべきだと訴えました。
たとえば著書『遺論・繁栄の哲学』の中で、「民主主義政治は、大勢に相談するだけよけいに金と時間がかかるが、それはやむをえないんだという考え方は、一応は成り立つかもわからない。しかしながら私は、ほんとうの民主主義とはそういうものではないと思っている。というのは、君主政治であれ民主政治であれ、やり方によっては能率が高くもなり低くもなると思うし、むしろ金と時間のかからないようにもっていくところに、民主主義政治の妙味があるように思うからである」と述べており、「国家をいかにマネジメントするか」ということの重要性を真剣に考え、提言していたことが見て取れます。
松下幸之助の政治観や国家観の要諦は、この『遺論・繁栄の哲学』にまとまっていますが、日本が進むべき道についても力強い主張を行なっています。
「われわれ日本人が今後めざして進むべき、軍事大国でも単なる経済大国でもない、より好ましい新たな目標はいったいどういうものかということについて、私見の一端を述べつつ、皆さんとともに考えてみたいと思うのである。
それでは、いったいどのような目標をもつことが、日本とお互い日本人にとって最も好ましいのであろうか。いろいろ考え方があり、また人によって意見がさまざまであると思う。けれども私は、今日の日本の姿を見、あるいは今後の日本人お互いの幸せというものを考えてみるとき、掲げるべき目標はおのずと一つに絞られてくるような気がするのである。
それはどういう目標かというと、ひと言でいうならば“精神大国”というか“道徳大国”とでもいうべき姿を実現していく、ということである。(中略)
一方で物を豊かにすることを図りつつ、同時に他方で心の面を高めていく、そしてそこに物心一如の繁栄という好ましい姿を実現する、それが今後日本と日本人がめざすべき精神大国の真の姿だと思うのである」
加えて本書には、現在の政治において重要課題として取り組みがなされている「道州制」について、さらには「無税国家」「収益分配国家」の発想や「観光立国」といった独自の国家観が網羅されています。ほかにも、『私の夢・日本の夢 21世紀の日本』には松下幸之助の理想とした日本の将来像が描かれており、ご一読をお薦めします。