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松下幸之助は単なる一企業の経営者ではありませんでした。世と人の繁栄、平和、幸福の実現を願い、その研究と実践に生涯を捧げた人物でもありました。著書『PHPのことば』の「序にかえて」で、その動機が記されています。
「終戦当時は食うに食なく、住むに家なく、働くに職のないといった状態でした。物の生産をしようと思っても、一向にそれにふさわしい施策が行なわれない。ヤミでボロ儲けをする人がある一方で、まじめに働けば働くほど窮乏していくといった社会の情勢でした。法を守ってヤミの物資を買わなかった判事さんが餓死するという悲惨な事件もあったわけです。そういった姿を見、また私自身も体験させられているうちに、よくわからないながらも、“こんなバカなことはない。どこかがまちがっている。人間とは本来もっと尊く偉大な存在であって、お互いの自覚と協力いかんによっては、もっと平和で豊かで幸せな生活を送れるはずだ”という思いが、日一日とつよまってきたのです。そして、そういう思いを多くの人びとに訴えてみたいという、矢も盾もたまらない気持ちから、PHP、すなわちお互い人間の真の繁栄と平和と幸福を求める研究と啓蒙の運動をはじめるようになったというわけです」
PHP(Peace and Happiness through Prosperity)とは、「繁栄による平和と幸福」を意味します。松下幸之助は企業経営にあたっても、利己的にならず、多くの人々が物心両面において豊かさを実現できるよう努力しました。
松下幸之助の「PHPの考え方」については、この『PHPのことば』や、それを再編集した『松下幸之助の哲学』、また『松下幸之助発言集』の第37巻、第38巻にまとまっています。幸之助はこれらの書籍で自身の基本的な哲学を展開しており、その視野の広さと強い使命感を知ることができます。「松下哲学」を理解するには必読の文献です。