世界大戦が二回ありました。それより小さい戦争は無数にある。日本だけとってみても相当ある。欧州はもちろんそうである。文化がこの百年に非常に進んだにもかかわらず、必ずしもそこに好ましい状態が生まれていません。電灯がついたり、飛行機が飛んだりしましたけれど、人と人との間の不信感というものは決して少なくなっていない。
これでいいのかどうかということです。どうしてこういう状態になるのかということは、いろいろ考え方もありましょうし、私もはっきりわかりませんけれど、私の今の考えでは、人間観というものが変わっていないところに、その原因がありはしないかという気がするのです。
『社員稼業』(1974)