本コラムでは、松下幸之助をはじめとする日本の名経営者・実業家の考え方やことばを紹介しながら、リーダーとして心得ておきたい経営の知恵を解説します。

 

<事業を伸ばす要諦> 常識を破るヒラメキ

目のつけどころ、発想・着眼のよさ

 アラスカに冷蔵庫を売り込んだ有名な話がある。以前、アメリカでは、バカなことをするたとえに、“エスキモーに冷蔵庫を売りに行くようなもの”という言葉があったという。しかし、ある人が、冷蔵庫というものは食べ物を冷やしたり、高温から守るためだけのものではない。食べ物を低温から守るもの、つまり適温に保つものであると考えて、アラスカに冷蔵庫を持ち込んだところ、これが大当たり。寒すぎるために食品がダメになるアラスカは、世帯当たりの保有数が、アメリカ第一位の冷蔵庫市場になった、という話である。

 

 今日のビッグ・ビジネスといわれるものも、こうしたちょっとした目のつけどころ、発想・着眼のよさに成功の要因を負っているものが多い。

 

 たとえば、前にあげたセコムにしても(「つねに現状を見直す――リーダーの心得(18)」参照)、当時の常識では考えられないことをやり、そうした常識を破る発想があったればこそ、企業として大きく羽ばたくことができたわけである。

 

本物の一所懸命さにまで至っているか

 ではどうすれば、そうした常識を破る発想やヒラメキが生まれるのか。それは結局、どれだけ自分の仕事、事業に打ち込んでいるか、徹底しているかによるのではないか。

 

 かつて松下幸之助は、「“神通力”という言葉があるが、このような言葉があるということは、これまでにその神通力を身につけた人があったということである。だからわれわれでも、ほんとうに自分の仕事、事業に打ち込んで徹底すれば、神通力が身につくはずだ。そうなれば、何でもおのずとわかるようになる。そうならないといけない」といったことがある。

 

 真剣な修練を重ねることによって、社会や人心の動向も他社の動きも自在に読み取れ、つねに適切な手が打てるようになる、またならなければならないというわけだが、日々自分の仕事に熱意をもって、われを忘れるほどに没入し、体験を重ね、修練を積む。そうしたなかから感性が磨かれ、ヒラメキが生まれ、思わぬ発明や発見につながっていくのであろう。逆にいえば、並の一所懸命さでは、“独創的なもの”を生み出すことは到底望めないということである。

 

「新規事業の展望がひらけない」「いい知恵が浮かばない」と嘆く前に、寝食を忘れ、時間を超越した、普通の一所懸命を突き抜けた、本物の一所懸命さにまで至っているかどうかを省みる必要がありそうである。

 

◆『部下のやる気に火をつける! リーダーの心得ハンドブック』から一部抜粋、編集

 

筆者

佐藤悌二郎(PHP研究所専務)

 

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