Q143:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?

あるとき、関連会社の工場を視察した幸之助は、新商品についてデザインの改善を提案しました。それに同意しつつ、上司の命によりこのような形にしたと答える担当者に、幸之助は何と言ったでしょう?

(1)「社員たちからより多くのアイディアを集めよ」
(2)「きみには上司を説得する権限がある」
(3)「次からは、直接私に相談するように」

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解答&解説コラム

 (2)が正解です。幸之助は常々、新商品が開発されると興味を持ち、みずから手に取って熱心に検分するとともに、担当者へいろいろ質問を投げかけていました。あるとき、関連会社の工場を視察し技術担当者から新商品について説明を受けた際にも、率直に感想を述べたのです。

 

 「きみ、この商品のデザインはもうちょっとこうしたほうがええのとちがうか」
 「はい、実は私も製作段階ではそう思っていたのです。しかし、上司の反対にあい、結局このような形にしました」

 その答えを聞き、幸之助の表情が急に険しくなります。
 「きみ自身がこうしたほうがいいという考えを持っていたのであれば、なぜ上司を説得しなかったんや。上司説得の権限はきみにあるんやで」

 

 組織において、上司から命じられたことが部下により適切に実行される、“命これに従う”という姿は一面大切です。しかしそれだけでは、事なかれ主義に陥り、硬直化した経営にもなりかねません。幸之助は社員に対して、たびたび年齢や地位、役職にかかわらず、自主自立の精神で仕事に臨むことの重要性を訴えてきました。同時に、上司も部下の意見具申に積極的に耳を傾ける。そうした姿勢から、会社の発展、繁栄がもたらされると考えていたのです。