Q80:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
大正11(1922)年、松下電器の従業員が50名くらいになっていたある日のことです。残業を命じられていた従業員が、仕事を残したまま遊びに行こうとして、幸之助から厳しい叱責を受けました。翌日、幸之助は、その従業員にどう接したでしょうか?
(1)朝一番に呼び、あらためて叱った
(2)自分からは声をかけず、謝罪に来るのを待った
(3)夕食を振る舞いながら、静かに諭した
解答&解説コラム
(3)が正解です。
大正11(1922)年の夏の暑い日のこと。その日のうちに仕上げなければならない仕事があり、幸之助は5、6人の従業員に残業を命じます。ところが、遊びたい盛りの若い従業員たちは、幸之助が出かけている間に、広場に野球をしに行ってしまいました。先輩格の従業員が遅れて工場を出ようとしたとき、幸之助が戻ってきます。
「残業してやってくれと言うたのになんでやらんのや! おまえまでがそんなことをするのか!」。幸之助に激しく叱責されたその従業員は、返す言葉もなく、残業して仕事を仕上げました。従業員はこのときのことをふり返り、「叱られながらも、“おまえまでが”と言われたことで、自分が認められていると感じ、心のどこかに喜びがあった」と言っています。
さらに翌日、仕事が終わるころ、幸之助から呼び出されたその従業員は、思いがけず夕食をご馳走になり、長い訓示を受けます。「命じられ、引き受けたことはやり遂げる責任がある。その責任を果たすのが人として一番大切なことや。そやから、わしはあれだけ怒ったんや」――諭すような幸之助の言葉に、従業員は素直な気持ちで頭を下げたのでした。