Q86:幸之助の以下のエピソードで当てはまるものは?
松下電器がまだ50名くらいの規模だったころ、従業員の1人が工場の外に商品を持ち出す不正を行いました。幸之助はその従業員にどのような処分を下したでしょうか?
(1)即日解雇し、その上司を厳罰に処した
(2)適当な罰を与え、解雇はしなかった
(3)見て見ぬふりをし、不問に付した
解答&解説コラム
(2)が正解です。
松下電器を創業して数年たった当時、従業員が不正を働くのは、幸之助にとって初めての体験でした。不祥事を起こした従業員を解雇することは世間的にも珍しくなかったので、思い切って辞めさせるべきか、幸之助は迷い、悩みます。
思案するうちに、ふと次のように考えました。“今かりに、監獄に入っている人が日本に10万人いるとすれば、法に触れない程度の罪を犯している人はその何倍もいるだろう。その人たちを天皇陛下がどうされているかというと、国内にとどめ、われわれと一緒に生活することをお許しになっている。それなのに一工場の主人にすぎない自分が、いい人のみを使って仕事をしようというのは虫がよすぎるのではないか”。
戦前のことであり、天皇陛下が絶対的な存在だった時代です。幸之助はそう思い至ると非常に気が楽になって、不正をした従業員に訓戒を与えるにとどめ、解雇はしませんでした。この出来事を通じ、幸之助はより大胆に人を使えるようになったと語っています。